出身大学で講和をしている様子

結婚しなくても幸せ?

「結婚が幸せとは限らない」と言われて、結婚相談所の私が思うこと

先日、福岡にある母校の大学で講話をしてきました。

卒業したゼミの集まりがあり、先輩方や現役の学生に向けて、自分の経験を話してほしいと声をかけていただいたのです。

自分が歩いてきた道が、微力ながらも誰かの役に立つ。そこから何か一つでも持ち帰ってもらえる。

それは、とても嬉しいことでした。

現役の学生には「結婚相談所」という仕事自体を知らない人も多く、恋愛や結婚について、さまざまな質問や意見が出ました。

その中で言われたのが、

「結婚が幸せとは限らない」

という言葉です。

結婚相談所をしていると、本当によく言われます。

今日は、この言葉に対して、結婚相談所を仕事にしている私がどう考えているのかを書きたいと思います。

結婚しただけで、幸せにはならない

まず、「結婚が幸せとは限らない」という意見自体は、その通りだと思っています。

結婚さえすれば、毎日が幸せになる。

理想の相手と出会えば、人生の悩みがすべてなくなる。

そんなことはありません。

結婚しても、夫婦関係に悩む人はいます。独身でも、自分らしく充実した人生を送っている人はたくさんいます。

結婚は、幸せを保証してくれるものではありません。

自分の人生を誰かに幸せにしてもらおうと思っている限り、どれだけ条件の良い相手と結婚しても、いずれ不満が出てくるでしょう。

だから、結婚を考える前に、まず自分自身がどんな人生を生きたいのかを考える必要があります。

自分にとっての幸せを、具体的にする

「幸せになりたい」と思っていても、幸せの中身は人によって違います。

では、自分にとって幸せな人生とは何なのでしょうか。

私は、人生の終わりを思い描くことから始めると、考えやすくなると思っています。

人生には始まりがあるように、必ず終わりがあります。

死を迎える時、どんな人生であれば「私は幸せだった」と思えるでしょうか。

例えば、小さい頃からパン屋さんになることが夢だったとします。

では、パン屋さんになれたら、その人は必ず幸せになれるのでしょうか。

実際に働き始めてみると、職場の人間関係が悪いかもしれない。給料が低く、長時間労働で生活に余裕がないかもしれません。

それでは、夢だったパン屋さんになれても、幸せとは言い切れないでしょう。

大切なのは、「パン屋さんになること」で考えるのを止めないことです。

パン屋さんになって、何を実現したいのか。

どんな人たちと働きたいのか。

どんな働き方をしたいのか。

仕事以外の時間を、どのように過ごしたいのか。

例えば、

自分で考えたパンを世の中に届けたい。

一緒に試行錯誤し、切磋琢磨できる仲間と働きたい。

一日八時間働き、週に二日は休みたい。

毎月三十万円を得て、家族や趣味の時間も大切にしたい。

ここまで具体的になると、漠然とした夢は、行動できる目標に変わります。

一つずつ目標をかなえていくことで、思い描いていた人生が、少しずつ現実になっていきます。

自分にとって何が幸せなのか。

それを誰かに決めてもらうのではなく、自分の言葉で説明できるようになること。

これが、自分の人生を生きるための第一歩だと思います。

人生には、受け取るだけでは得られない幸せがある

自分らしい人生を生きることは、とても大切です。

ただ、人の幸せは「自分が満たされること」だけで完結するものではないとも思っています。

人生にはもう一つ、誰かを幸せにすることで初めて知る喜びがあります。

愛情や責任を、自分以外の人や次の世代へ受け渡していくことです。

結婚して家庭を築き、家族を幸せにする。

子どもを育てる。

後輩の成長を支える。

自分が得た知識や経験を、次の人へ渡す。

世の中を少しでも良くするために、仕事や活動を残す。

その形は、人によって違います。

私たちは、生まれた時から実に多くのものを与えてもらっています。

命、からだ、こころ。

生きるために必要な水や食べ物。

服、住む場所、名前。

それだけではありません。

誰かの笑顔や思いやり、人とのつながり、教えてもらった知識、失敗する機会さえも、人生の中で受け取ってきたものです。

受け取ったものを自分だけのところで止めず、誰かへ渡していく。

そこには、自分一人が満たされることとは違う喜びがあります。

もちろん、自分をすり減らしてまで人に尽くすことが「与える」ことではありません。

それは愛ではなく、自己犠牲になってしまいます。

しかし反対に、完全に満たされた人間にならなければ誰かを愛せない、というわけでもありません。

人は未完成なまま誰かを支え、支えられながら成長していくものだからです。

私が思う、結婚でしか得られない幸せ

では、結婚とは何なのでしょうか。

私は、結婚とは「自分を幸せにしてくれる人を手に入れること」ではないと思っています。

この人の人生にも責任を持ちたい。

二人で力を合わせて、幸せな生活をつくっていきたい。

そう思える相手と、人生をともにすることです。

恋愛は、「好き」という気持ちから始まります。

しかし結婚生活では、好きという気持ちだけでは乗り越えられないことが何度も起こります。

体調を崩す日もあります。

仕事がうまくいかず、余裕を失う時もあります。

相手に優しくできない日も、自分のことしか考えられない日もあるでしょう。

そんな時にも簡単に相手を切り捨てず、話し合い、支え合い、二人にとってより良い答えを探していく。

結婚でしか得られない幸せとは、毎日幸せな気分でいられることではありません。

自分一人の人生では出会わなかった喜びや苦しみを、誰かとともに引き受けること。

相手の存在によって、自分の弱さや未熟さに気づくこと。

それでも逃げずに向き合う中で、自分の愛情や責任感が育っていくこと。

そこに、結婚の価値があるのだと思っています。

幸せが保証されていないから、結婚には価値がないのか

「結婚が幸せとは限らない」

確かに、その通りです。

でも、それだけを理由に結婚の価値まで否定してしまうのは、少し違うのではないでしょうか。

仕事に失敗する可能性があるからといって、働くことに意味がないわけではありません。

人間関係で傷つくことがあるからといって、人と関わる価値がなくなるわけでもありません。

結婚も同じです。

幸せが保証されていないからこそ、誰と、どんな家庭を築くのかを真剣に考える必要があります。

相手選びだけではありません。

自分自身も、誰かと生活をつくっていける人間になる必要があります。

結婚相談所は、「結婚さえすれば幸せになれる」と信じ込ませる場所ではありません。

少なくとも、私はそういう場所にはしたくありません。

自分は、どんな人生を送りたいのか。

誰と、何を大切にして生きていきたいのか。

相手に何を求めるのか。

そして自分は、相手の人生に何を与えられるのか。

そこまで考えたうえで、人生をともに歩む相手を探す場所でありたいと思っています。

結婚は、幸せになるためだけのものではない

私は、すべての人が結婚すべきだとは思っていません。

結婚しなくても、幸せな人生を送ることはできます。

子どもを持たなくても、愛情や経験を次の世代へ渡していくことはできます。

生き方は、自分で選んでいい。

ただ、本当は結婚したいと思っているのに、

「結婚が幸せとは限らないから」

という言葉を使って、自分の願いから逃げてしまうのは、もったいないと思います。

傷つくかもしれない。

失敗するかもしれない。

自分にできるか分からない。

その不安を、「結婚に価値はない」という話に置き換えてはいないでしょうか。

幸せとは、失敗しない人生のことではありません。

自分で選んだ人生に責任を持ち、喜びも苦しみも経験しながら、受け取ったものを誰かへ渡していくこと。

結婚は、幸せにしてもらうための制度ではありません。

誰かと一緒に幸せをつくる。その責任を、自分の意志で引き受ける選択です。

そして私は、その選択によって初めて得られる幸せが、確かにあると思っています。

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